逮捕された元CIA工作員のジェリー・チャン・シン・リー容疑者(右)(C)AFP=時事

 

 米中央情報局(CIA)が中国政府内に張りめぐらしていた情報網に異変を探知したのは、2010年のことだった。それまで、CIAの情報源は中国の機密情報を通報していたが、突然連絡が絶たれ、1人、また1人と消えていったというのだ。

 昨年5月20日付の『ニューヨーク・タイムズ』(NYT)によると、2012年末までに少なくとも12人が中国当局によって殺害された。投獄された者を合わせると総計18~20人。見せしめのため、中国政府庁舎中庭で、同僚らの目前で射殺された者もいたと言われる。

 今年年明け早々の1月15日、中国側に内通していた犯人とみられる元CIA工作員が突然、ケネディ国際空港でキャセイ航空機から降り立ったところで逮捕された。

 同種の事件としては、1994年にCIAの中堅幹部、ロシア防諜部長オルドリッチ・エイムズ(終身刑で服役中)の事件がある。彼は旧ソ連・ロシア内に巣くったCIAスパイ10人以上の実名をソ連国家保安委員会(KGB)に通報していた。

 今回の事件もCIAが被ったダメージは大きい。さらに、軍事関係情報が事件に関連して漏れていた可能性もあり、日本の安全保障に悪影響を与える可能性もありそうだ。事件の深層を追った。

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