パリ同時多発テロを首謀したアブデルアミド・アバウドも、犯罪者から「イスラム国」の戦闘員へリクルートされた1人だった (C)AFP=時事

 

 虐げられた人々の立場を代弁し、信念と理論で武装しつつ、革命を目指す非合法組織の面々――。「テロリスト」にはかつて、そのようなイメージがつきまとった。どうやら現代は違うようだ。酒や麻薬に溺れ、刑務所に出入りしたならず者が、自爆テロに走る。背景にあるのは、欧州各地で進む犯罪集団とテロ組織との融合である。「犯罪とテロのネクサス(絆)」と呼ばれるこの現象は、これからのテロ対策の鍵となる可能性があるとして、研究者や治安担当者らの注目を集めている。

欲求に応える「ジハード主義」

 東西冷戦の時代、資本主義国家で革命を起こすにはマルクス主義の学習が不可欠だった。だから、テロを担うのも、基本的にはインテリだった。きちんと理解しているかどうかはともかく、それなりに勉強に励み、地下活動に勤しめば、ひょっとするとソ連から水面下の援助も得られた。

 テロリストの支えが左翼からイスラム主義に移っても、こうしたインテリ傾向はしばらく続いた。オサマ・ビンラディンやアイマン・ザワヒリらアルカイダを率いる人物の大部分は、富裕層やインテリ家庭の出身だった。2001年の米同時多発テロ実行犯の多くも、アラブ諸国から欧州各国への留学生をはじめ中産階級以上の出身者である。「テロリストに本当の労働者階級はほとんどいない」というのが、専門家の間で半ば常識として受け止められていた。

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