ラオスのフレンチレストランの料理長サヤブーさんは、若いころ、パリの三ツ星レストラン「ルカ・キャルトン」で働いていた。後列右から6番目(サヤブーさん提供)

 

 旅行したラオスの首都ビエンチャンで秀逸なフランス料理と出会った。聞くと、レストランを経営するラオス人の料理長は、フランスの錚々たるグラン・シェフ(「ルレ・エ・シャトー」が優れた料理人に与える称号)、故アラン・サンドランス、ジョエル・ロブションらの右腕として働いた経歴の持ち主だった。故国に戻って23年、その味を求めて政府高官や各国の大使がやってくる。

貧乏人のスープ

 2月半ばの日曜日の昼下がり、メコン川岸近くにあるレストラン「ナダオ」を訪ねた。前夜、2人の知人と食事を楽しんだばかりで、連日の訪問だった。前日、料理長のサヤブー・スタクマルさん(56)に取材を申し込むと、「あす昼食を一緒にしながら話そう」と招いてくれたのだ。 

 
政府高官や各国の大使が訪れる「ナダオ」料理長サヤブー・スタクマルさん (筆者撮影、以下同)

 木造平屋の簡素な「ナダオ」は客席十数席と小ぶりだが、料理長の輝かしい足跡を示す写真や賞状が額に入って壁に飾られていた。

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