連載小説 Δ(デルタ)(48)
2018年3月17日

沖縄県・尖閣諸島の魚釣島と北小島、南小島 (C)時事
【前回までのあらすじ】
秘密部隊デルタはセンカクに向かった。その上空に、中国機が次々と接近してくる。日中の空のバトルが始まろうとしていた。さらに巡視船「うおつり」でも最後の戦いの幕が開いた。
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市川はすばやく警戒をめぐらせる視線の先に、男から奪った短機関銃の銃口を振り向けながら、ブリッジに通じる階段を駈けあがっていった。
「謝(シェ)ッ、聞こえるか! 相棒の馬(マー)は俺が殺した。ゴムボートも破壊した。だから、もうおまえはこの船から逃げられない」
声を限りに叫びつづける。馬の喉首にナイフを突き刺した瞬間の昂奮がまだ全身を駈けめぐり、一生分のアドレナリンを放出しつづけているかのようだった。
「もう味方はいないぞ! 謝、おまえはひとりぼっちだ。待ってろよ、馬のサブマシンガンでおまえを蜂の巣にしてやるからな」
言うなり銃のトリガーを軽く引いて、1連射を階段の壁面に浴びせかける。9ミリ弾が隔壁にめりこみ、鉄粉が舞い上がり、砕けたかけらが四方に飛び散る。
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