オーストリアも苦しい立場(左がセバスティアン・クルツ首相)(C)AFP=時事

 

 3月4日に起きた、イギリスのソールズベリーにおけるロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリとその娘に対する暗殺未遂事件を受け、イギリスのテリーザ・メイ首相はロシアに対する制裁措置を明らかにした。これまでのところ、EU(欧州連合)の17カ国を含む29カ国程度が、EUからの35名を含め計約150名のロシア外交官を国外追放処分とした。ギリシャ、ポルトガル、スイスなどはこの制裁に加わっていないが、その中でオーストリアの不参加が目を引く。

 オーストリアはこれまで西側の一員として、対ロシア経済制裁に加わってきた。ところが今回、西側の動きとは明確な一線を画す。セバスティアン・クルツ首相は3月26日、「オーストリアは東西の架け橋であり続けなければならない」旨発言した。

西側へのゲートウェイ

 西側諸国は、自由と民主主義という大義により結びつけられた共同体である。日本もその一員であり、日本は常に、この自由と民主主義を奉じるという価値観の共有を強調する。しかし、大義は大儀である。そこには個別の国益が常に影を落とす。大義は掲げつつも、それぞれの国が置かれた個別事情から実際の行動は異なるものになって当然である。

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