米トランプ政権が口火を切った中国との貿易紛争は、「保護貿易の台頭」「自由貿易体制を揺るがす」といった大げさな見出しが新聞を賑わしたが、米中両国はお互いの“カード”を見切ったうえで駆け引きをしているに過ぎない。米国は関税上乗せなど輸入制限をカードにIT産業での主導権維持と国内への工場回帰を求め、中国は米国からの大豆、原油、液化天然ガス(LNG)の輸入をカードに幅広い製品の対米輸出維持を狙っている。“貿易紛争”は米中間の経済構造の調整の効果を持ち、解決後は米中の相互依存関係は安定化し、より深まるだろう。

原因は「規模」ではなく「構造」

 3月23日に米国が発動した鉄鋼とアルミへの関税上乗せは、中国にとってかすり傷ほどの打撃しかない。すでに多くの指摘が出ているが、2017年の米国の鉄鋼輸入に占める中国産の比率は第10位の2%、アルミ製品は第4位の9%にすぎない。一方、中国側が対抗措置として検討を発表した豚肉、アルミスクラップ、オレンジ、ピスタチオなどへの上乗せ関税も米国にはほとんど痛みはない。双方の大げさな表現の割に肩すかしの喧嘩だ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。