米中「貿易紛争」の行方(上)「半導体」が引き金だった米国の「焦り」

執筆者:後藤康浩 2018年4月4日
エリア: 北米 アジア
 

 米トランプ政権が口火を切った中国との貿易紛争は、「保護貿易の台頭」「自由貿易体制を揺るがす」といった大げさな見出しが新聞を賑わしたが、米中両国はお互いの“カード”を見切ったうえで駆け引きをしているに過ぎない。米国は関税上乗せなど輸入制限をカードにIT産業での主導権維持と国内への工場回帰を求め、中国は米国からの大豆、原油、液化天然ガス(LNG)の輸入をカードに幅広い製品の対米輸出維持を狙っている。“貿易紛争”は米中間の経済構造の調整の効果を持ち、解決後は米中の相互依存関係は安定化し、より深まるだろう。

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執筆者プロフィール
後藤康浩(ごとうやすひろ) 亜細亜大学都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。 1958年福岡県生まれ。早稲田大政経学部卒、豪ボンド大MBA修了。1984年日経新聞入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在などを経て、産業部編集委員、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職。産業政策、モノづくり、アジア経済、資源エネルギー問題などを専門とし、大学で教鞭を執る傍ら、テレビ東京系列『未来世紀ジパング』などにも出演していた。現在も幅広いメディアで講演や執筆活動を行うほか、企業の社外取締役なども務めている。著書に『アジア都市の成長戦略』(2018年度「岡倉天心記念賞」受賞/慶應義塾大学出版会)、『ネクスト・アジア』(日本経済新聞出版)、『資源・食糧・エネルギーが変える世界』(日本経済新聞出版)、『アジア力』(日本経済新聞出版)、『強い工場』(日経BP)、『勝つ工場』(日本経済新聞出版)などがある。
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