ベトナム人ファット君が働く、『朝日新聞』販売所「ASA赤堤」(筆者撮影、以下同)

 

 出稼ぎ目的で来日した後、法律で許される「週28時間以内」を上回る就労をしている留学生は数多い。アルバイトをかけ持ちすれば、法律違反は簡単にできる。

 ただし、1つのアルバイトで「週28時間以内」を超えるケースは少ない。留学生を雇う側の企業も、入管難民法違反(不法就労助長)の罪に問われることを恐れるからだ。

 それが新聞配達の現場に限っては、留学生の違法就労が常態化している。しかも法律を逆手に取り、残業代すら支払われない。こんな理不尽な状況がまかり通っている職種は、外国人労働者が働く現場を長く取材している筆者も他には思い浮かばない。

 東京・世田谷区にある『朝日新聞』販売所「ASA赤堤」――。ここで働くベトナム人奨学生ファット君(仮名)の就労時間は、普段より配達に時間のかかる正月や雪の日などがない限り、しばらく前までは週30時間程度だった。それが3月初めの1週間は、40時間以上も働くことになった。販売所の意向で、突然、配達区域が広がったからだ。

 配達区域を広げれば「週28時間以内」の就労制限を大きく超えることは、販売所もわかっていたはずだ。にもかかわらず、なぜそんなことになったのか。

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