民主党・国民新党「日銀人事茶番劇」第二幕

執筆者:高橋洋一2008年8月号

 五月末、政府は空席になっていた日銀審議委員候補として池尾和人慶応大学教授(五五)を提示した。六人から成る審議委員は、総裁・副総裁とともに日銀の意思決定を行なう政策委員会のメンバーだ。この人事は事前に報道機関に漏れたため、民主党は一時態度を硬化させる場面もあったが、池尾氏自身に対する否定的な見方は示さなかった。六月三日、衆議院議院運営委員会において、池尾氏は現在の金融政策を「極めて適切と評価する」としたうえで、金融システムの安定性、健全性の重要さを指摘した。六月五日、民主党は党本部で役員会を開き、政府提示の日銀審議委員に池尾氏を充てる人事案に同意することを了承した。  ところが、民主党と統一会派を組む国民新党は、池尾氏を「郵政民営化賛成論者」だとして不同意の方針を決め、民主党に対しても同調を求め、「池尾氏に不同意としなければ、参院での統一会派解消に踏み切る」との姿勢を打ち出した。これに押し切られ、民主党は方針を撤回し、不同意とすることにした。まさしく党利党略で日銀人事が弄ばれた形だ。  正直に言えば、私は、池尾氏の郵政改革に対する考え方に違和感を持っている。しかし、本稿で明らかにしたいことは、そうした経済学的な見解ではなく、今回の池尾氏をめぐる民主党や国民新党の政治的な対応は筋が通っていないということだ。

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