米国「イラン核合意」離脱で石油価格は「上がる」のか
2018年5月10日
2014年の夏、ジョン・ケリー米国務長官(オバマ政権、当時)はサウジアラビア(以下、サウジ)のアブドッラー前国王と会談し、供給阻害が起こって石油価格が急騰する場合には増産で対応して貰うよう打ち合わせた。アメリカが主導して「イスラム国(IS)」への本格的攻撃を開始する直前の話だ。中東の地政学リスクが増加し、油価が高騰する可能性を危惧したからだ。
その後、何が起こったか?
シリア国内での空爆など、米軍が主導する有志連合軍と「イスラム国(IS)」との戦闘は激化した。だが、夏場にピークをつけた原油価格は秋口にかけて下落を続け、11月末のOPEC(石油輸出国機構)総会が「減産しない」ことを決議したため、12月に入って急落した。それから3年、原油価格は低迷を続けていた。
この歴史的事実が教えてくれるのは、「地政学リスク」とひとまとめにするのは間違いで、石油供給に物理的に影響を与える要因か否かが重要だということだ。そして何よりも、原油価格の動向には「需給バランス」という基礎的要因が極めて重要だ、ということだろう。
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