道路標識の下につけられた垂れ幕には、「私たちの給料はどっち?」と書かれている。ヴォストーチュヌィ宇宙基地の近くにて(アムールインフォHPより)
 

 

 ドローンと同様、宇宙は現代の戦争を考える上で不可欠のドメイン(領域)となりつつある。核弾頭の技術開発を加速させるための弾道ミサイルから出発したロケット技術は、そのまま人工衛星を打ち上げるロケットとなり、冷戦下の米ソは偵察衛星から通信衛星、弾道ミサイル警戒衛星、航法衛星など様々な軍事衛星を競って打ち上げた。冷戦期に打ち上げられた人工衛星の約8割は軍事用途を帯びていた、とも言われる。

世界最強の米軍「宇宙戦力」

 冷戦最後の日々に勃発した湾岸戦争(1991年)は、これらの軍事衛星をフルに活用した初の「宇宙戦争」となった。この戦争では、部隊の位置把握や爆弾の誘導用にGPS(全地球測位システム)衛星が活用され、弾道ミサイル警戒衛星はイラク軍が発射する短距離弾道ミサイル(ソ連製のR-17エルブリス、西側でいう「スカッド」)を瞬時に探知して地上に警報を発した。地球の裏側で戦う米軍と米本土を結ぶために通信衛星が活躍し、イラク軍の動きを捉えた衛星画像も、電子データで瞬時に現地の多国籍軍司令部へと伝達された。それまでの軍事衛星は国家の最高指導部や統合参謀本部といった戦略レベルの意思決定に主に用いられてきたが、前線で戦う部隊の日々のオペレーションにも人工衛星が活用される時代がやってきたのである。

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