日銀引き受け国債で、巨額の戦費を賄った?

執筆者:野口悠紀雄2018年5月17日
(C)AFP=時事

 

 戦費は税で調達するにはあまりにも膨大だから、公債の増発によって調達されることが多い。

 表1は、日清戦争以降の臨時軍事費特別会計の公債依存度を示したものだ。

 

 日露戦争の時にも公債依存度は高かった。この時は、外国からの借り入れが多かった。しかし、第2次世界大戦では、このオプションは使えなかった。

 国内で調達された戦費のほとんどは、日本銀行による国債の直接引き受けで賄われたのである。

 日銀は、国債を買った対価を日銀券というマネーを増発することによって支払う。政府は、そのマネーを兵士の給与や食料・衣料品等の購入、兵器・軍事物資等の購入に充てる。

 1937年から1945年まで公債発行額は、約1500億円である。

 前回見たように、1937年から1944年までの8年間のGNP(国民総生産)の合計は、3603億円だ。だから、国債発行総額は、この間のGNP総額の約4割になる。

 現在はどうか? 2016年度の一般会計の新規国債発行額は34.4兆円で、名目GDP(国内総生産)は539.3兆円だから、国債発行額はGDPの6.4%だ。これと比べれば、戦時中の国債発行額がいかに大きかったかが分かる。

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