マネーの魔術史 (51)

日銀引き受け国債で、巨額の戦費を賄った?

執筆者:野口悠紀雄 2018年5月17日
タグ: 日銀 日本
エリア: アジア
(C)AFP=時事

 

 戦費は税で調達するにはあまりにも膨大だから、公債の増発によって調達されることが多い。

 表1は、日清戦争以降の臨時軍事費特別会計の公債依存度を示したものだ。

 

 日露戦争の時にも公債依存度は高かった。この時は、外国からの借り入れが多かった。しかし、第2次世界大戦では、このオプションは使えなかった。

 国内で調達された戦費のほとんどは、日本銀行による国債の直接引き受けで賄われたのである。

 日銀は、国債を買った対価を日銀券というマネーを増発することによって支払う。政府は、そのマネーを兵士の給与や食料・衣料品等の購入、兵器・軍事物資等の購入に充てる。

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執筆者プロフィール
野口悠紀雄(のぐちゆきお) 1940年東京生まれ。東京大学工学部卒業後、大蔵省入省。1972年エール大学Ph.D.(経済学博士号)取得。一橋大学教授、東京大学教授などを経て、現在、早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論。1992年に『バブルの経済学』(日本経済新聞社)で吉野作造賞。ミリオンセラーとなった『「超」整理法』(中公新書)ほか『戦後日本経済史』(新潮社)、『数字は武器になる』(同)、『ブロックチェーン革命』(日本経済新聞社)、『マネーの魔術史』(新潮選書)、『AI時代の「超」発想法』(PHPビジネス新書)など著書多数。公式ホームページ『野口悠紀雄Online』【http://www.noguchi.co.jp
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