日銀のホームページより、左は前回、右は今回の展望リポート。赤の下線部分が削除された。

 

 日本銀行は4月27、28日に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、それまでの消費者物価指数(以下、CPI)の上昇率に関する「2%程度に達する時期は、2019 年度頃になる可能性が高い」という文言を削除した。

 27日の記者会見で、黒田東彦日銀総裁は文言の削除について、「あくまで達成される時期の『見通し』として示してきたが、市場の一部に『達成時期』と捉え、この変化を政策変更に結び付ける見方が根強く残っている。政策委員会は特定の達成時期を念頭において政策運営しているわけではない。政策スタンスが誤解される恐れがあるので今回から文言を削除した」と説明した。

 その上で、「日銀が2%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するために政策運営をすることは全く変わらない」と強弁した。

 しかし、市場関係者の多くは、「日銀はCPIの2%達成目標を反故にし、白旗を掲げた」と受け止めた。

 さもありなん。5年前の2013年3月、日銀総裁就任と同時に「2年程度で、2%のCPI上昇を達成」なる目標を華々しく打ち上げ、自ら“異次元緩和”と銘打った未曾有の金融緩和を開始したのは、他でもない黒田総裁自身である。当初から、市場関係者はもとよりメディアでも「特定の達成時期」を明確に明示したうえでの金融政策、と受け止めたし、黒田総裁自身も、会見のたびごとにそれを事実上「肯定」し続けてきた。だが、その目論見は外れ、達成時期の見通しはこれまで6度も先送りされてきた。それをいまさら「特定の達成時期を念頭において政策運営しているわけではない」とはいかにも見苦しい弁明ではないか、という声が市場関係者の間に流れたのはむしろ当然だろう。

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