5月14日のイスラエル独立記念日に合わせて、エルサレムに米大使館が開かれた。トランプ大統領のエルサレム首都認定宣言・テルアビブからの大使館移転表明を前倒しに実施したものである。既存の総領事館を大使館に改組して早期開館に漕ぎ着けた。

開館セレモニーには、直前までトランプ大統領自身の出席を匂わせていたが、結局大統領本人は来ず、しかし娘のイヴァンカ氏とその夫クシュナー氏が出席するという、殊更に「トランプ・ファミリー色」が強いものとなった。

中東政策に限らないのかもしれないが、特に中東政策において、トランプ政権の外交・安全保障政策の「ファミリー・ビジネス」としての性質が、政権2年目の前半に明白になってきたように思われる。

エルサレムへの大使館移転については、イスラエルの存立とエルサレムの首都としての繁栄(そしてゆくゆくは「第三の神殿」の建立)を宗教的に重視するキリスト教右派の支持を得るという意味で「国内の特定の支持層向け」「選挙対策」という意味が認められるが、トランプ政権の対イスラエル政策は、民主政治でどこでも行われる人気取り・支持固めの域を超えているようにも思える。

中東政策の中でも特に象徴的な意味があるイスラエル・パレスチナの和平とその中でも特にエルサレム問題への対応が、ユダヤ教徒でイスラエルとの経済関係を深めようとしている娘婿クシュナー氏とその改宗した妻イヴァンカに委ねられることで、宗教とビジネスが一体化したトランプの「ファミリー・ビジネス」に米国の中東政策が融合している印象は極めて濃くなる。大統領職と不動産業を並行して行う「利益相反」まみれの特異な時代として、将来にトランプ政権前期は記憶されるかもしれない。

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