中国「監視社会」強化に米国が築く「分断線」

執筆者:田中直毅2018年5月30日
サイバー空間での中国「監視社会」化を異形ととらえ、対抗する米国。溝は深まるか(左・習近平中国国家主席、右・トランプ米大統領)(C)AFP=時事

 

 米中関係の根底的変化は、2013年に明らかになった中国による米国へのサイバー・アタックによって引き起こされた、と言ってよい。予想を超えるスピードで登場した中国製のステルス戦闘機J31は、米国のF35を外見上もまったく模したものだった。

 さらにサイバー空間での中国人民解放軍による窃盗行為は、軍事機密のみにとどまらず、民間企業の意思決定プロセスにも及んでいることが、米国の調査会社によって明らかにされた。サイバー・アタックの時間分布をとると、中国における勤務時間帯に集中しており、また昼休み時間には攻撃が中断していることも分かったのだ。

 そこで米国の政府機関から、中国の「ファーウェイ(華為技術)」と「ZTE(中興通訊)」の通信機器の排除が行われた。バラク・オバマ前政権においても、米国の安全保障に及ぼす中国発の影響が正面から論じられたのだ。

 そして翌2014年には米国司法省が、5人の中国人民解放軍関係者に対して窃盗罪での訴追を決めた。その後、中国からの米国への直接投資は対米外国投資委員会(CFIUS)が厳しく吟味するようになった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。