気候問題に熱心に取り組むローマ法王フランシスコ (『フィナンシャル・タイムズ』ホームページより)

 

 池内恵先生の近著『【中東大混迷を解く】シーア派とスンニ派』(新潮選書、2018年5月25日)を読んで、これまでの宗教と社会との関係性に関する理解がイスラム教には当てはまらない、では、キリスト教ではどうなのだろうか、と考えさせられている。

 先週末、ローマ法王が石油業界の幹部を集めて気候変動問題に関する会議を行う、というニュース・ヘッドラインを見たときの筆者のファースト・リアクションは、なぜドナルド・トランプ大統領は呼ばないのだろうか、ということだった。問題の存在を、石油業界の幹部はほぼ全員が認識している。だが、トランプ大統領は違う。「パリ協定」からの離脱を表明し、その後、本件についてどう対応しようとしているのかまったく見えていない。

 6月11日の朝、起きてニュース検索をしていたら『フィナンシャル・タイムズ』(FT)がローマにおける件の会合について報じていた。

 この記事を読んで筆者は、前述した疑問の回答は、ローマ法王は傘下の各種機関の投資行動を通じ、石油業界幹部には影響を与えうる。だが、トランプ大統領を動かすには、彼を大統領に選出した人々、いわゆる支持基盤に影響を与えなければならない。トランプ大統領を強固に支持しているのは、ユダヤ教徒であり、キリスト教福音派の人々だ。ローマ法王の声が届く相手ではない――と愚考したが、如何なものであろうか。

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