タジキスタンの「アクノー」(ロシア航空宇宙軍のホームページより)

 

 前回の小欄(2018年6月15日「宇宙での『劣勢挽回』を狙うロシア『衛星攻撃』能力」)では、宇宙空間における米国の優勢に対するロシアの戦略について紹介した。米国の人工衛星群を攻撃あるいは妨害し、その機能を発揮できなくするというものだ。ただ、口で言うのは簡単でも、これを実行するとなると話は別である。

 では、ロシアの対宇宙作戦能力とは実際、いかほどのものなのか。

トップクラスの宇宙状況監視能力

 ロシアの実力を測る上でまず重要なのが、「宇宙状況監視(SSA)」と呼ばれる能力である。

 宇宙空間において、どの国がどのような種類の衛星を何機ほど配備しているのか。その衛星の軌道傾斜角は何度で、近地点及び遠地点はどの辺りか。こういったデータが事前に判明していなければ、宇宙空間で効果的に軍事作戦を行うことはできない(SSAの重要性は、宇宙ゴミとの衝突回避など宇宙安全保障に関わる様々な分野で急速に高まっているが、ここでは軍事面に話題を絞る)。

 このSSAの点では、ロシアは世界でもトップクラスの能力を誇っている。米国から飛来する弾道ミサイルを探知するために張り巡らした早期警戒レーダーが、地球低軌道を周回する人工衛星(偵察衛星の多くはこの軌道を取る)を追尾できるためだ。これに匹敵するレーダー網を保有する国は、世界で米国しかない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。