中国の指導層の自国認識の正確性については、相当疑ってかかった方がよい。多分最大の理由は、共産党の内部における縦割り組織(サイロ)の内部の錯綜度が、他の組織からは伺う術(すべ)もないほどになっているからだろう。この点は組織の末端での事態にとどまらず、トップレベルでも生じていると考えるべきだ。

 昨今で最も明らかになったのは、習近平中国共産党総書記(国家主席)と中国人民解放軍幹部との間の齟齬であろう。南シナ海での領有権を確立するために、中国は島嶼地帯での埋め立てと港湾づくりを始めた。しかし2015年9月にホワイトハウスを訪問した習近平総書記は、スプラトリー諸島の拠点の軍事化を否定した。

 そもそも南シナ海における領有権紛争に対しては、フィリピンがハーグの国際仲裁裁判所に中国の行為にかかわって異議申し立てを行っていた。2016年7月には、中国の主張する南シナ海での「九段線」は歴史的に見ても根拠のないもの、との裁定が出た。ところがその後も中国による南シナ海の軍事化に歯止めはかからない。そして人民解放軍の幹部は、中国内外において南シナ海における軍事化を正当化し続けている。

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