ここのところ「中東通信」のアップをしばし控えて熟考していた。というのは、あまりに「フェイクニュース」まがいの情報発信が多すぎるのである。いかがわしいサイトではなく、中東諸国の主要大国や有力勢力がスポンサーになった著名メディアのニュースが、いずれも、虚偽ではないが、露骨に情報操作を狙った発信や、あからさまな政治的ポジションを取ったものばかりになっている。「戦略的コミュニケーション」と言えば一見聞こえがいいが、SNS上で釣り情報を流して一瞬ごとに印象操作を競っていると言っても良い。情報戦が行き着くところまで行き、「サウジ系のアル=アラビーヤがああ言えば、カタール系のアル=ジャジーラがこう言う」といったパターンが見え透いてしまっている。おまけに米国トランプ大統領が自身のツイッターを使って盛大にこの印象操作の合戦に参戦し、個人の立場と米国大統領の立場を頻繁に切り替えて情報発信を行って撹乱するので、国際的な情報秩序は大いに乱れている。シリアとイランがロシアと組んで行う虚偽情報の波は絶え間無く続き、イスラエルが米国とロシアを天秤にかけて行う、ピンポイントの軍事力行使と首脳外交を情報戦と組み合わせて最大限の効果を狙う作戦は、ここのところあたり続けている。

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