「ロシア:サウスストリーム計画の撤回とロシアの天然ガスパイプライン網の再偏」本村真澄、石油天然ガス・金属鉱物資源機構調査部(2016年12月19日)より

 

 筆者が入社して数年たったころ、「動機は不純でもいい。海外に出張するネタを探しだして、ともかく行って来い」という上司がいた。半世紀近く前のことで、商社でも多くの若手社員を海外に「慣れさせる」ことが重要だった時代だ。ニューヨーク勤務帰りのこの上司は、若手が視野を広げ、発想を豊かにする一方策としても、海外出張を奨励していたようだ。

 米ドナルド・トランプ大統領がヘルシンキまで飛んで行って、露ウラジーミル・プーチン大統領と会談した動機は何だったんだろうか、と考えていたら、こんな昔話を思い出していた。

 よもや直前の週末に、スコットランドの自らのゴルフ場でゴルフがしたかったからそのついでに、という不純な動機ではないんだろうな。

 それほど今回の米露首脳会談は、中身のないものだった。

チャーチルの喝破

 そのトランプ大統領は先週、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が「NATO(北大西洋条約機構)」が敵対しているロシアの「捕虜」になっていると痛罵した。ドイツがガス供給の多くをロシアからのパイプライン(P/L)供給に頼っているからだ。

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