歯に衣着せぬ物言いで人気の次期大統領(C)AFP=時事

 

 7月1日に行われたメキシコ大統領選は、事前予想の通り、新興左派政党「国家再生運動」(Morena)のアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(頭文字をとってAMLO)候補が当選した。同時に行われた上下両院議員選挙でも、Morenaとその連携政党が過半数を獲得し、既成政党はいずれも大きく退潮、メキシコの政治地図が劇的に様変わりすることになった。

 というのも、メキシコでは約1世紀の間、2大右派政党の「制度的革命党」(PRI)と「国民行動党」(PAN)による政権が続いてきた。メキシコ革命(1910~17年)の変動を収束し、革命の正統な継承者として1党独裁体制を敷いたのがPRI。そのヘゲモニー政党制の下、長らく名目的な野党に甘んじたカトリック系右派のPANは、2000年の大統領選で政権を奪取。民主化に移行し、2期にわたって政権を担った。しかし、2012年の大統領選で再びPRIが勝利し、誕生したのが、現在のエンリケ・ペニャ・ニエト政権である。

 今回の選挙の特徴は、現代メキシコ政治をリードしてきたこの既成政党を有権者が拒絶し、新興左派政党の地滑り的勝利が生まれたこと、そして北米自由貿易協定(NAFTA)の発効後初めてアメリカの南に左派政権が誕生したことにある。

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