メキシコ「新興左派政権」に立ちはだかる「麻薬カルテル」と「トランプ」

執筆者:遅野井茂雄 2018年7月20日
エリア: 中南米
歯に衣着せぬ物言いで人気の次期大統領(C)AFP=時事

 

 7月1日に行われたメキシコ大統領選は、事前予想の通り、新興左派政党「国家再生運動」(Morena)のアンドレス・マヌエル・ロペスオブラドール(頭文字をとってAMLO)候補が当選した。同時に行われた上下両院議員選挙でも、Morenaとその連携政党が過半数を獲得し、既成政党はいずれも大きく退潮、メキシコの政治地図が劇的に様変わりすることになった。

 というのも、メキシコでは約1世紀の間、2大右派政党の「制度的革命党」(PRI)と「国民行動党」(PAN)による政権が続いてきた。メキシコ革命(1910~17年)の変動を収束し、革命の正統な継承者として1党独裁体制を敷いたのがPRI。そのヘゲモニー政党制の下、長らく名目的な野党に甘んじたカトリック系右派のPANは、2000年の大統領選で政権を奪取。民主化に移行し、2期にわたって政権を担った。しかし、2012年の大統領選で再びPRIが勝利し、誕生したのが、現在のエンリケ・ペニャ・ニエト政権である。

カテゴリ: 政治 社会
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執筆者プロフィール
遅野井茂雄(おそのいしげお) 筑波大学名誉教授。1952年松本市生れ。東京外国語大学卒。筑波大学大学院修士課程修了後、アジア経済研究所入所。ペルー問題研究所客員研究員、在ペルー日本国大使館1等書記官、アジア経済研究所主任調査研究員、南山大学教授を経て、2003年より筑波大学大学院教授、人文社会系長、2018年4月より現職。専門はラテンアメリカ政治・国際関係。主著に『試練のフジモリ大統領―現代ペルー危機をどう捉えるか』(日本放送出版協会、共著)、『現代ペルーとフジモリ政権 (アジアを見る眼)』(アジア経済研究所)、『ラテンアメリカ世界を生きる』(新評論、共著)、『21世紀ラテンアメリカの左派政権:虚像と実像』(アジア経済研究所、編著)、『現代アンデス諸国の政治変動』(明石書店、共著)など。
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