「クラレットジャグ」を手にイタリア人初のメジャー制覇の喜びを語るモリナリ(C)EPA=時事

 

 ゴルフ好きなら、1995年の「全英オープン」の大詰めを覚えている人は多いことだろう。

 恰幅のいいイタリア人のコンスタンチノ・ロッカが18メートルほどもあった長い長いパットを奇跡のように沈め、米国の人気者だったジョン・デーリーとのプレーオフへ突入。しかし、聖地セント・アンドリュースを最後に沸かせたのは、ロッカではなくデーリーだった。

 1991年「全米プロ」を無名の新人ながら制し、シンデレラボーイと呼ばれて一気にスターになったデーリーは、あの95年の全英オープンの大詰めで、右こぶしをぶんぶん振り回しながら大観衆を煽り、人々は「ゴー、ジョン! ゴー、ジョン!」を連呼していた。

 その様子をテレビで見ていた米国、いや世界中のゴルフファンは、長い後ろ髪を風になびかせながらセント・アンドリュースを闊歩するデーリーの姿に興奮し、歓喜の声を上げていたに違いない。

 だが、その一方で、ロッカの敗北を静かに見つめていた少年たちがいた。母国イタリアの3色の国旗がゴルフの聖地にはためく期待を小さな胸に膨らませ、しかし夢破れ、悔し涙を目にいっぱい溜めた2人の少年。

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