6月3日の党初会合で挨拶するステープ元副首相(C)EPA=時事

 

 いよいよタイの政治的モラトリアムが幕を閉じ、政治の季節が始まりそうだ。来るべき総選挙に向けて今年5月に結成された新党「タイ行動連盟(Action Coalition for Thailand)」が、活動をスタートさせたからである。

 この党の選挙委員長を務めるのは、民主党のアピシット・ウェーチャチワ政権(2008年~2011年)で副首相を務めたステープ・トゥアクスバン。彼が民主党の中核として国政の表舞台に登場してから約40年が経つが、その行動を振り返ると、一貫した主義主張が感じ取れない。敢えて酷評するなら、その政治的な振る舞いは「無原則」なのだ。

 実はそこを通して、タイの政治文化、つまり「国王を元首とするタイの民主主義」の1つの特質が見えてくる。

 文化を「生き方」、「生きる姿かたち」と考えるなら、政治文化は政治を巡って展開される人間模様と言える。タイの政治文化を考える時、その表面的な派手さはともかく、本質的には変わりようがないらしいとの感を強くする。定期的に繰り返されるクーデターとそれを軸とする政権交代のみならず、政局劇に登場する個々の政治家の振る舞いにおいても、である。

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