欧州が困惑する「米露」親密「米欧」亀裂

執筆者:花田吉隆2018年8月2日
もはや同盟国とは言えないほど険悪な関係になったNATO各国首脳らと(C)AFP=時事

 

 7月11、12日のNATO(北大西洋条約機構)首脳会議、12日からのドナルド・トランプ米大統領による英国訪問、続く16日の米露ヘルシンキ首脳会談は、ヨーロッパに強烈な衝撃を与えた。これをどう評するか。NATO及び英国訪問は「破壊的だった」(『フィナンシャル・タイムズ』=FT=社説)、「銃の乱射事件に見舞われたかのよう」(独紙『フランクフルター・アルゲマイネ』=FAZ=ベルトルド・コーラー発行人)であり、ヘルシンキ会談は「最も恥ずべきパフォーマンスの1つ」(ジョン・マケイン米上院議員)と酷評が相次いだ。

 今回の訪問により、大西洋同盟に大きな亀裂が入った。メディアの論評もこう続く。「米大統領は明らかにNATO同盟国の疑念を深め、あるいは、敵意を醸成さえした」(FT)、「これまで営々と築き上げてきた大西洋同盟がこのトランプ大統領の言動で一夜にして崩れ去った」(FAZ)。

 戦後、米国はNATOの結束を促し、大西洋同盟の強化を図ることで旧ソ連の脅威に対抗した。さしもの超大国米国とて、1国でソ連率いる東側陣営に対抗するわけにはいかない。この確固たる大西洋同盟の存在こそが40年にわたる冷戦を戦い抜いた原動力であり、その標榜する自由、民主主義、人権こそが冷戦後も世界を率いてきた。その大西洋同盟が揺らいでいる。

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