加熱する「米中貿易戦争」終着点への懸念

執筆者:岩瀬昇2018年8月7日
まだこの頃はケンカしていなかった(2017年11月の訪中時)(C)AFP=時事

 

 現在の原油市場における最大の不確定要因は、米中貿易戦争の行方と世界景気への影響だろう。

 これまでにも指摘しているとおり、価格動向を左右する基本的要因は需給バランスだ。正確に言えば、市場参加者が、売買を行うにあたって将来の需給バランスをどう読むかということだが、いずれにしても基本に需給バランスがあるということだ。

 では、将来の需給バランスに影響を与えるファクターは何があるのだろうか。

 供給サイドのファクターとしては、イラン原油輸出量の減少動向、ベネズエラの生産動向、サウジアラビア(以下サウジ)など余力を持つ産油国の生産動向およびその結果生ずる「余剰生産能力」の減少の影響などがある。もちろん、リビアやナイジェリアが抱えている地政学リスクも忘れてはならない。一方、米シェールは、主要生産地であるテキサス州西部からニューメキシコ州にまたがるパーミアン盆地からの送油パイプライン能力に限界があるため、来年後半までは「微増」でしかないだろう。

 総じて言えば、価格を下げるファクターは少ないと言える。

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