【特別対談】池内恵×岩瀬昇:中東「いまを知る」決定版(3)
2018年8月8日
岩瀬昇 1979年以前、果たして本当にサウジアラビア(以下、サウジ)は、開かれた寛容なイスラームだったのだろうか。そんなことは全然ないのではないか、と思います。イスラームの教えが生活そのものであるという中で何十年あるいは何百年と生きてきているわけですから、その人たちが昔より今のほうがより厳しくなっている、と感じることなど全然ないのではないか、という気がしています。
池内恵 1979年という年は、イラン革命だけではなく、メッカで発生したアル・ハラーム・モスク占拠事件によって、画期になっています。もともとサウジ社会全体に厳格な思想はあるわけですが、この事件で顕在化した保守的な勢力に対抗するために、サウド家の王政の側がさらに厳格な政策を競ったというところはあると思います。
そういう意味で、1979年以前のサウジには、それ以降と比べればより開かれていて寛容さもあったという議論に、ある程度正しい面はあるのですよ。でも1979年以前がすごく開放的で自由だったかというと、そうでもない。ただ1979年以降に政府の政策として、明確にこれ見よがしに厳しくした。正確に言えば、サウジの国民に厳しい宗教規範の励行を強制し、それによって、政府に強制してほしいと思っている一定数の国民を満足させた。そういう側面があります。
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