「純粋な祈り」に導かれた1万年の変遷「縄文の美」

執筆者:フォーサイト編集部2018年8月13日
岡本太郎が魂を揺さぶられた《火焰型土器・王冠型土器》。 新潟県十日町市 野首遺跡出土 
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 新潟・十日町市博物館蔵 撮影:本田武士
 

 「縄文土器の荒々しい、不協和な形態、紋様に心構えなしにふれると、誰もがドギッとする。なかんずく爛熟した中期の土器の凄まじさは言語を絶するのである」

 芸術家・岡本太郎は縄文土器を目にした際の衝撃を雑誌『みづゑ』(1952年2月)の「四次元との対話―縄文土器論」にこう記している。岡本は長くヨーロッパに暮らした後、帰国。日本で見る「伝統」と呼ばれる文化の弱々しさに失望していた。

《火焰型土器》(国宝) 新潟県十日町市 笹山遺跡出土 
縄文時代(中期)・前3000~前2000年 
新潟・十日町市蔵(十日町市博物館保管)

 「その私が思わずうなってしまったのは、縄文土器にふれたときです。からだじゅうがひっかきまわされるような気がしました。やがてなんともいえない快感が血管の中をかけめぐり、モリモリ力があふれ、吹きおこるのを覚えたのです。たんに日本、そして民族にたいしてだけではなく、もっと根源的な、人間にたいする感動と信頼感、したしみさえひしひしと感じとる思いでした」(岡本太郎『日本の伝統』光文社)

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