最終日、1番ティに臨む松山(筆者撮影、以下同)

 

 今年の「全米プロゴルフ選手権」最終日(8月12日)は手に汗握る展開だった。昨年と今年の「全米オープン」を連覇したブルックス・ケプカと、2013年以来の復活優勝とメジャー15勝目を目指すタイガー・ウッズの優勝争いに、世界中のゴルフファンが釘付けになったことだろう。

 勝利を掴んだのはケプカ。ウッズは2打差で勝利を逃した。「僕はギャラリーにとって、アゲンストの存在だった」とケプカ自身が振り返ったように、世の中の大多数がウッズの勝利を望んでいたことは想像に難くない。

 だが、勝敗が決した途端、ウッズを応援していた人々がみな、勝者ケプカを温かく祝福したこと、そして何より敗北したウッズがケプカの優勝を誰よりもうれしそうに讃えていた場面が印象的だった。それが、スポーツの良さ、ゴルフの魅力なのだと感じさせられた。

 とは言え、記録に残るのは勝者。それ以外の選手がその大会の歴史に刻まれることはない。35位で去っていった松山英樹も、然り。

 それが、勝負の世界の厳しさであり、勝者になることを何度も経験してきた松山だからこそ、敗者が味わう悔しさ、情けなさも強く感じ取るのだと思う。

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