「国際主義」に生きた日本人たち

細谷雄一『戦後史の解放Ⅱ自主独立とは何か 前編―敗戦から日本国憲法制定まで―』『戦後史の解放Ⅱ自主独立とは何か 後編―冷戦開始から講和条約まで―』(新潮選書)

執筆者:篠田英朗2018年9月5日
 
 

 鮮やかだ。こういう爽やかな政治史を書いてみたい、と素直に思う。

 国際的な視点から、日本史を見る。素朴だが、贅沢な要請だ。果たして本書より以前に、この要請を、これほど見事に満たしてくれた書物があったか。見事な労作である。

 本書は、細谷による「戦後史の解放」というシリーズの「2巻目」の「前編」と「後編」である。このシリーズの構成は、いささか複雑になってきている。戦前を扱った1巻から始まり、敗戦から憲法制定までの時代を扱った「2巻前編」をへて、3冊目の「2巻後編」で冷戦下のサンフランシスコ講和条約の時点にたどり着く。この複雑な構成は、しかし細谷が、斬新な歴史書を書いていることの証しでもある。

 細谷は、国際政治史を専門とする。その細谷が、なぜ日本政治史の著作シリーズを刊行しているのか? 答えは簡単である。細谷は、国際政治史家でなければ書けない日本政治史を、書いているのだ。

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