「国際主義」に生きた日本人たち

細谷雄一『戦後史の解放Ⅱ自主独立とは何か 前編―敗戦から日本国憲法制定まで―』『戦後史の解放Ⅱ自主独立とは何か 後編―冷戦開始から講和条約まで―』(新潮選書)

執筆者:篠田英朗 2018年9月5日
タグ: 日本
エリア: アジア
 
 

 鮮やかだ。こういう爽やかな政治史を書いてみたい、と素直に思う。

 国際的な視点から、日本史を見る。素朴だが、贅沢な要請だ。果たして本書より以前に、この要請を、これほど見事に満たしてくれた書物があったか。見事な労作である。

 本書は、細谷による「戦後史の解放」というシリーズの「2巻目」の「前編」と「後編」である。このシリーズの構成は、いささか複雑になってきている。戦前を扱った1巻から始まり、敗戦から憲法制定までの時代を扱った「2巻前編」をへて、3冊目の「2巻後編」で冷戦下のサンフランシスコ講和条約の時点にたどり着く。この複雑な構成は、しかし細谷が、斬新な歴史書を書いていることの証しでもある。

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執筆者プロフィール
篠田英朗(しのだひであき) 東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院政治学研究科修士課程、ロンドン大学(LSE)国際関係学部博士課程修了。国際関係学博士(Ph.D.)。国際政治学、平和構築論が専門。学生時代より難民救援活動に従事し、クルド難民(イラン)、ソマリア難民(ジブチ)への緊急援助のための短期ボランティアとして派遣された経験を持つ。日本政府から派遣されて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で投票所責任者として勤務。ロンドン大学およびキール大学非常勤講師、広島大学平和科学研究センター助手、助教授、准教授を経て、2013年から現職。2007年より外務省委託「平和構築人材育成事業」/「平和構築・開発におけるグローバル人材育成事業」を、実施団体責任者として指揮。著書に『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)、『集団的自衛権の思想史―憲法九条と日米安保』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築入門』、『ほんとうの憲法』(いずれもちくま新書)、『憲法学の病』(新潮新書)など多数。
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