
ポーランドの大統領選挙が5月18日に行われる。第1回投票で過半数を獲得できる候補がいなければ(その可能性が極めて高い)、6月1日に上位2名によって決選投票が行われる。事実上、ワルシャワ市長のラファウ・トシャスコフスキ(Rafał Trzaskowski)(市民連合=「市民プラットフォーム」が中心)と歴史家のカロル・ナヴロツキ(Karol Nawrocki)(「法と正義」が支持)の一騎打ちである。この選挙は、ヨーロッパ全般が右傾化する中で、2023年の国会総選挙で勝利したリベラル派「市民プラットフォーム」が大統領の座も獲得し、政権を安定させるかどうかがかかった重要な選挙である。また、誰が大統領になるかによって、対ウクライナ政策にも大きな影響があり、その行方が注目されている。
「法と正義」の現職大統領はリベラル派与党の政策に抵抗
2023年の総選挙で、リベラル派「市民プラットフォーム」は2015年以来8年間続いた保守派「法と正義」政権を打ち破り、国会で多数派を占めるとともに首相の座を獲得した。しかし、任期5年の大統領は保守派「法と正義」が握ったままで、政権運営にねじれ現象が起きていた。いわゆる「コアビタシオン(大統領と首相が異なる党派に属することを指すフランスの政治用語)」状態である。
ポーランド政治の「ねじれ現象」については以下の記事を参照
2023年の「市民プラットフォーム」政権誕生以来、ドナルド・トゥスク首相は、公約の実現を精力的に進め、これまで悪化していたEU(欧州連合)との関係も改善させた。結果的に、凍結されていたEUからの資金の一部が解除され、ポーランドへの支援が再開された。しかし、EUが懸念していた司法の独立性、公共メディアの中立性などは改革のテーブルに載ったものの、憲法裁判所などが依然として前政権の影響下にあるため、改革ははかなか進んでいない(憲法裁判所判事の任命権は大統領にある)。中絶規制の緩和に対しても現職アンジェイ・ドゥダ大統領(「法と正義」)の抵抗が強く(大統領には法律への署名権と拒否権がある)、さらには連立政権内からの少なからぬ抵抗もあった。EU寄りの「グリーン・ディール」政策については、EU懐疑派の大統領に加え産業界や農民団体の抵抗もあって、法改正が進んでいない。
このねじれ現象を解決するためには、「市民プラットフォーム」が2024年の地方選挙、そして2025年の大統領選挙に勝利する必要があった。

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