中国との責任ある関係構築が求められる(C)時事

 

 1970年代後半のカンボジアを支配したポル・ポト政権の後ろ盾は中国共産党であり、カンボジア全土はあたかも毛沢東思想の実験場と化していた。ヴェトナムの強力な支援を受けて反ポル・ポト陣営の一員に加わったフン・センが権力の頂点に立ち独裁の度合いを強め、GDP至上主義の道に転じた今、ポル・ポト政権当時とは較べるべくもなく中国寄りの姿勢を貫いている。いや一部には「中国の植民地」との酷評すら聞かれる。歴史の皮肉というべきか。あるいは「漢族の熱帯への進軍」による必然か。

 たとえば2017年にカンボジアに投じられた外資の53%は、中国資本が占める。「一帯一路」を掲げて嵩にかかってカンボジアに進出する中国からは、過去2年の間に官民合わせて30億ドル近い資金が投入されたとも伝えられる。カンボジア最大のシハヌークビル港の再開発のために2016年から今年3月にかけて投じられた13億ドルのうち、11億ドルは中国資金だ。 

 フン・セン政権はシハヌークビル港周辺の広大な土地(バチカンの20倍に相当)で、2020年完成を期して経済特区の建設を進めている。さしずめ「カンボジア版深圳」といったところだろうか。ここに中国から300余の製造業者が進出し、1万人余の雇用機会を創出するという。すでに100余の企業が進出し、一帯一路に沿ってカンボジアと周辺国、さらにヨーロッパ市場との中継基地化を狙っている。

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