こうして海から獲ってきたエサをヒナにあげる
(C)BONNE PIOCHE CINEMA – PAPRIKA FILMS - 2016 - Photo : © Daisy Gilardini
 

 南極大陸に冬が訪れる5~6月、氷山に囲まれた内陸部のコロニーで、彼らの子育ては始まる。太古から繰り返されてきたその営みは、あまりに過酷だ。

 コウテイペンギンはメスが産卵するとオスに卵を預け、エサを獲りに海へ向かう。その距離、実に100キロ。たっぷり栄養を蓄えて戻ってくるまで、2カ月の長旅だ。オスはその間、脚の上に卵を載せ、お腹のだぶついた皮をかぶせて温める。食べるものは気休めの雪しかなく、マイナス60度の極寒が体温を奪っていく。それでも空腹と寒さに耐えながら、ひたすら卵を温めるのだ。やがてヒナがかえり、しばらくしてメスが戻ると、今度はオスが海へ。交互にコロニーと海を往復しながら、12~1月にヒナが巣立つまで育て上げる。

 しかし、子育てがいつも上手くいくとは限らない。メスが卵をオスに預ける時、20秒でも氷の上に留まれば、卵は凍ってしまう。メスの帰りが少し遅れても、ヒナは餓死する。オスが卵やヒナを放棄してエサを獲りに行ってしまうこともあれば、メスの帰りを待って出発したオスが、途中で力尽きてしまうこともある。綱渡りの子育てなのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。