「後出し」された2通目の契約書。1通目にあった好条件はすべて消えていた(筆者撮影)
 

 日本にブータンの若者を留学生として送り出しているブータンの斡旋会社「ブータン・エンプロイメント・オーバーシーズ」(BEO)と契約書を交わした後、ドルジ君(仮名・20代)は3カ月間に及ぶ日本語の研修を受けることになった。その傍らで、留学ビザ取得に向けた手続きも、BEOの手配で着々と進んだ。ビザを審査するのは、日本の法務省入国管理局と在ブータン日本大使館だ。両者から経費支弁能力の証明書類の提出を求められた際に備え、書類もBEOが用意してくれた。

「証明書には、預金残高は約230万ニュルタム(約373万円)程度、月収は約10万ニュルタム(約16万円)といった数字が載っていた。もちろん、どちらも全く嘘の数字です。そんな貯金があれば、オーストラリアに留学していた。親の収入だって契約書に書かれた金額の3分の1以下です」

 留学資金70万ニュルタムの借り入れ先となったのはブータン政府系の銀行だ。「学び・稼ぐプログラム」を通じた留学生は皆、同じ銀行から資金を借りている。金利は年8パーセントで、5年後までに完済する契約だ。月々の返済額は約1万4000ニュルタム(約2万3000円)に及ぶ。借金は大きなリスクだが、日本に行けば「短期間で返済できる」というブローカーの言葉を信じた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。