ブータンから留学生を送り出した青木薫氏を取り上げた、『朝日新聞』2017年10月28日付記事(筆者撮影)

 

「幸せの国」として知られるブータン――。そのブータンから2017年、留学生として来日したドルジ君(仮名・20代)は、日本で不幸な暮らしを強いられている。母国で背負った借金の返済のため、アルバイトに明け暮れる毎日だ。肝心の日本語の勉強は捗らず、このままでは目標の大学院への進学も難しい。

 ドルジ君は、ブータン労働人材省が昨年から始めた日本への留学制度「The Learn and Earn Program」(学び・稼ぐプログラム)で来日した。同プログラムを利用し、日本の日本語学校へ入学したブータン人は735人を数える。人口80万に満たないブータンでは、かなりの数である。なぜ、こんな制度がつくられたのか。

 ブータンでは長く絶対君主制が敷かれていたが、2008年に立憲君主制へと移行した。そして立憲君主制となって2度目の総選挙があった2013年、ツェリン・トブゲイ現首相率いる国民民主党へと政権交代が起きた。その際、同党が掲げた公約の1つが「若者の失業対策」だった。

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