北朝鮮「建国70年」の実相(3)韓国の「秘策」

執筆者:平井久志2018年9月13日
9月5日、金正恩党委員長(右から2人目)と握手する、鄭義溶韓国大統領府国家安全保障室長(左から2人目)。この、文在寅大統領の特使派遣が転機になった[KCNA VIA KNS](C)AFP=時事

 

 シンガポールで6月に行われた米朝首脳会談では、原則的な合意はしたものの、その後の交渉では、米国が要求する「非核化」でも、北朝鮮が要求する「体制の保証」でも具体的な進展はない。そこにマイク・ポンペオ米国務長官の8月末の訪朝が中止され、現在は、米朝間の交渉が行き詰まった状態だ。

転換点は韓国特使団の訪朝

 韓国政府はこの膠着状態を打開するために9月5日に平壌へ特使団を送り、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の融和的な姿勢を引き出すことに成功した。

 今回の建国70周年に当たっての北朝鮮の自制的な姿勢は、その延長線上にある。米朝協議を再び軌道に乗せるために建国70周年の記念行事ではひとまず自制し、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が9月18日から20日まで平壌を訪問して行われる、金正恩政権になって3回目の南北首脳会談で何とか突破口を見つけ、9月下旬に米国で行われる米韓首脳会談を通じて韓国から米国への働きかけを強め、さらに第2回米朝首脳会談へとつなげる狙いと見られた。情勢転換のポイントとなった韓国特使団の訪朝以降の流れを検証してみたい。

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