1998年4月、静岡県川奈に到着したエリツィン大統領(左)と橋本龍太郎首相(右、いずれも当時)(C)時事

 

 ウラジオストクで9月10日に行われた安倍晋三首相とウラジーミル・プーチン露大統領の22回目の首脳会談は、北方領土問題でまたも進展がなかった。大統領はその2日後のパネル・ディスカッションで、前提条件なしの平和条約を年末までに締結するとの新提案を唐突に行い、日本側を翻弄した。

 首脳会談後の記者発表で、プーチン大統領は領土問題について「短期間で解決できると考えるのはナイーブだ」と強調。パネル・ディスカッションでは「ロシアにとって政治的、心理的に困難かつ敏感な問題だ」と述べ、早期解決の意思がないことを示唆した。島を返した場合に米軍が使用する可能性にも改めて言及している。

 ロシア政府は経済難から、公共料金値上げや消費税引き上げ、年金受給年齢引き上げなどの方針を発表。国民の反対デモも起き、プーチン大統領の支持率は低下している。政権維持を最重視する現政権が、領土割譲という不人気な政策に新たに取り組むとは思えない。こう見てくると、自民党総裁選で3選を果たした安倍首相の任期中の平和条約締結は困難になりつつある。

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