ブータン予備選挙では、各地の投票所で行列ができた(ブータン国営放送BBSより)

 

 9月18日の『読売新聞』(電子版)は、15日に実施されたブータンの総選挙予備選挙の結果、親インド政策を進めてきた与党「国民民主党」が4党のうち3位(得票率27.4%)に後退し、10月18日に予定される総選挙本選が1位の「ブータン協同党」(得票率31.9%)と2位の「ブータン調和党」(30.9%)の間で争われることになったと伝えた。

 ブータンの選挙制度では総選挙予備選挙の上位2党が本選に進むことになっているため、本選の結果如何にかかわらず、5年ぶりの政権交代が決定的だ。インド依存からの変化を求める国民の声が国民民主党の敗因とみられているが、最近の中国のブータン進出状況から考えるなら、総選挙を自らの影響力拡大につなげようと、中国が選挙干渉を狙った可能性は十分に考えられる。

インド依存から親中へ

 1年前の昨年9月、折から起こった中印国境紛争に関して、筆者はこう綴った。

「今次紛争においてネパールに加え、ブータンもまた中国寄りの姿勢を見せたと伝えられる」「我が国においてブータンは、チャーミングな国王ご一家と国民幸福度で世界トップクラス、さらには我が皇室との親密な関係を持つ小さな山国のイメージが強い。たしかに米朝間で繰り広げられるような粗野で激越な言葉の応酬などは微塵も見られないが、ブータンもまた国際政治の最前線に位置し、大国の思惑に翻弄されながらも国家の独自性を求めて苦慮している。現在のワンチュク5世王の微笑みの陰に、国際政治の荒波に立ち向かい苦闘する小国の悲哀を感じ取るべきではないか」(2017年9月29日「『中印国境紛争』狭間の小国『ブータン』微笑みの陰の『苦闘』」参照)。

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