歴史を巻き戻す「国連トランプ演説」

執筆者:鈴木一人2018年9月28日
国連総会で演説するトランプ大統領。会場から失笑が漏れたことだけがクローズアップされるが……(C)AFP=時事

 

 国連のハイレベルウィークが始まった。通例ならば、国連総会の各国首脳による演説はブラジルがトップバッターを務め(第1回国連総会のときからの慣習)、ホスト国であるアメリカが2番手を務めるというのが習わしとなっている。しかし、今年はドナルド・トランプ米大統領が自分の演説の番になっても会場に現れず、30分ほど遅刻し、さらには記者団の質問にも答えるという悠長な対応をしていたため、3番目に演説するはずのエクアドルを急遽繰り上げ(しかもレニン・モレノ大統領は過去に暴漢に襲われたため足が悪く車椅子を使っており、演壇に登るためのスロープを用意する必要があった)、アメリカが3番目に演説するという異例の事態となった。

 トランプ大統領が遅刻したのは、就任当初の緊張感や気負いがなくなったのかもしれないし、また、国連人権理事会からの脱退や国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を止めるなど、国連に対して消極的な政策を続ける姿勢を鮮明にするための遅刻だったのかもしれない。いずれにしても、今回のトランプ大統領の演説は昨年ほど力の入ったものではなく、プロンプターに流れる原稿を嫌々ながら読んでいるかのような印象すらあった。

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