「軍最高権力者」新登場で気になるタイの変容

執筆者:樋泉克夫2018年10月1日
 
御年58のアピラット新陸軍司令官(地元紙バンコクポストより)

 

 タイでは10月1日に新会計年度が始まり、国軍のみならず官僚機構全体が新たな人事体制でスタートすることになる。

 タイ国軍は陸・海・空の3軍に加え、この3軍を統括する上部組織の国軍最高司令部で構成されているが、この最高司令部は実働部隊を持たないだけに、国軍最高司令官は形式上、国軍のトップであるものの、儀典用ポストに近い。国軍最高司令部の幹部に就任することは「冷蔵庫入り」と囁かれ、階級の如何を問わず「予備役」と同じような扱いである。

 では、国軍における実質的な最高実力者は誰か。それは、時に政権の後ろ盾となり、時に最大の不安定要因となるタイの最高権力集団、すなわち陸軍を掌握する陸軍司令官である。

ポスト・プラユットの新陸軍司令官

 この陸軍司令官に新たに着任するのが、アピラット・コンソンポン陸軍大将だ。軍人としては、やや異色の経歴を持つ。1960年にバンコクに生まれ、国軍幹部を養成する国防学院などで学んではいるが、アメリカで経営学修士号を取得し、任官は25歳というから年齢的には遅い。

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