「ブラジルのトランプ」と呼ばれる極右候補者ジャイル・ボルソナロ下院議員 
(C)AFP=時事
 

 10月7日に迫ったブラジルの大統領選挙は、1985年の民主化以降、最大の危機的状況の下で行われていると言っても過言ではない。大規模汚職に端を発した大統領の罷免に続く政治危機と、不況からの回復のさなか、新興国通貨安に見舞われた経済危機の中にあるからだ。

 それだけに「未来の国ブラジル」と言われ続けてきた南米の大国にとって、今回の選挙は再建への道筋を決する重要な選挙戦であるはずだ。しかし、当初から有力候補者が定まらず、民主化以降の選挙の中で希にみる不透明さが際立ち、これがまたレアルの通貨安を招いてきた。

「アダジはルラ」

 不透明感を強めてきた最大の要因は、汚職(マネーロンダリング)で有罪となった「労働者党」(PT)の前党首ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ元大統領(在任2003~10年)が出馬できるか、が焦点となってきたことだ。元大統領は在任中の社会政策が功を奏して、低所得層を中心に依然高い人気を誇っている。収監中の身でありながら立候補に執念を燃やし、「ルラは自由」、「ルラのいない選挙は違法」と支持者の圧力を盾に抵抗してきた。が、最終的に9月11日、司法の判断に従って出馬を諦めたことで、選挙戦に付きまとっていた1つのもやもや感が解消された。

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