2013年6月、子宮頸がんワクチンの勧奨一時差し控えを議決し、記者会見する厚生労働省の桃井真里子副反応検討部会座長(右から2人目、当時)ら。ここから迷走が始まった (C)時事

 

 ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんを起こす。HPV感染を予防するためのワクチンが開発され、2009年にわが国でも承認された。2010年には公費接種の対象に加えられ、2013年の予防接種法改正では法定接種に追加された。

 ところが、接種後に疼痛などの訴えが続発し、厚労省は2013年6月、「積極的な接種勧奨を差し控え」を通達した。先立つ3月には全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会が組織され、2016年に集団訴訟が提訴された。

 その後、HPVワクチンの取り扱いについて、わが国は迷走する。詳細は2016年4月7日に筆者が紹介したとおりだ(「『子宮頸がんワクチン訴訟』で明らかになった『情報』と『制度』の不足」)。

「副反応報道」をなかったことにする『朝日』

 この記事から2年半が経過するが、状況は変わらない。むしろ、ますます悪化したと言っていい。それは、HPVワクチンの記事がばったりと減ってしまったからだ。新聞記事のデータベースである「日経テレコン」を用いて調べたところ、『朝日新聞』が過去1年間に掲載した「HPVワクチン」か「子宮頸がんワクチン」を含む記事は、わずかに10件だった。副反応が話題となった2013年の58件の5分の1以下だ。一連のあの報道は何だったのだろう。

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