「メルケルの時代」は終わるのか (C) AFP=時事(議員団長選を終えてその場を後にする首相)

 

「メルケル首相の終わりが視野に入ってきた」。スイスの高級紙『ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング』はそう断ずる。

 ドイツ議会における与党議員団長は、米国の多数党院内総務同様、時の政権にとり極めて重要だ。政策の実現には議会の同意が必要だが、その同意の取りまとめに当たるのが他ならぬ議員団長である。首相は、議員団長を通し自らの党の所属議員を束ね、それを中心に議会の同意を取り付けていく。

 当然、議員団長に就くのは首相の第1の腹心であり、ドイツの場合、この13年、フォルカー・カウダー氏がその任に当たってきた。カウダー氏はアンゲラ・メルケル首相の子飼いであり、13年間、メルケル首相の意向を忠実に踏まえ行動してきた。実にメルケル首相はカウダー氏を通して議会の支持を確固たるものとし、その政策の裏付けを得てきたのである。

 無論、カウダー氏のあまりの忠義ぶりが、逆に党所属議員の反発を買わなかったわけではない。カウダー氏の同僚議員に対する扱いが幾分ぞんざいだったこともあり、「カウダーはメルケルべったり」「議会の独自性が失われた、議会としての矜持はどうなった」と、カウダー氏に辛辣な言葉が浴びせられることもなかったわけではない。確かにカウダー氏は首相の方を向き過ぎていたかもしれない。

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