2010年のマスターズ、初日66で首位に立った際の「ブンブン丸」(C)AFP=時事

 

 今、米ゴルフ界で「復活優勝」と言ったら、それは9月のプレーオフ・シリーズ最終戦「ツアー選手権」で5年ぶりの勝利を挙げたタイガー・ウッズ(42)のあの見事な復活優勝のことを指す。

 だが、いつの時代にも、印象的な復活優勝というものは、いくつか見られた。その中で、私が一番心を動かされた復活優勝は、フレッド・カプルス(59)が2003年に「シェル・ヒューストン・オープン」で挙げた5年ぶりの勝利だった。

 ウイニングパットを沈めた瞬間、カプルスはバイザーのツバを下げ、溢れる涙を隠しながら男泣きした。嗚咽で肩を震わせながらその場に立ち尽くし、再び手に入れた勝利の味を涙とともに味わっていた。

 カプルスが「もう一度、頑張ろう」と思い立つまでの道程も、そう決意してからの道程も、長く険しい日々だったことを大勢のファンも多かれ少なかれ知っていた。だからだったのだろう。あの場に居合わせたたくさんのギャラリーがカプルスの男泣きに、もらい泣きした。

 ゴルフの世界は素晴らしい――そう思わせてくれたカプルスのあの勝利の場面は、あれから15年以上経った今でも私の脳裏に焼き付いている。

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