今年2月にも「ラーマ寺院・再建」を訴えるヒンドゥ―教徒の行進が行われた(C)AFP=時事

 

 しばしば流血の惨事に彩られてきたインドの政治・社会史上、2002年の「グジャラート暴動」と並ぶ最悪の宗教対立と考えられるのが、北部ウッタルプラデシュ州東部・アヨーディヤの「モスク破壊事件」だろう。

 ヒンドゥー教の神ビシュヌの化身ラーマの生誕地とされるアヨーディヤには、ムガル帝国時代に建立されたモスク(イスラーム礼拝所)があった。それが1992年、ヒンドゥー・ナショナリストらによって突然破壊され、政治や司法を巻き込んで今日まで尾を引く一大問題となっている。

 ヒンドゥー、イスラーム両教徒は長年にわたり、このアヨーディヤの地が自らのコミュニティーに帰属する、と主張。あたかもパレスチナ問題におけるエルサレムのような複雑な位置づけとなっていた。

 この問題でインド最高裁が9月末に示した司法判断は、憲法や信仰上の問題に踏み込まず、もっぱら土地の所有権争いとして審理をやり直すというかなり曖昧なものだったが、両教徒はともに「我々の勝利」と受け止めており、政府や当事者による今後の出方次第では新たな対立の火種となり、来春に迫った次期総選挙の行方をも左右しかねない。

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