ボナールの初期作品からは、日本美術に対する強い関心が見て取れる。左は《庭の女性たち》、右は《乳母たちの散歩、辻馬車の列》 撮影:筒口直弘
 

 19世紀末のフランス・パリ、ポール・ゴーガンの美学から影響を受け、芸術家のグループが新しい芸術の創造を目指して結成した「ナビ派」(「ナビ」はヘブライ語で預言者の意味)。「ナビ派」と聞いても、前後に登場した「印象派」や「フォビスム」「キュビスム」「シュルレアリスム」と比べれば、その名になじみがない方が多いかもしれない。しかし、近代都市生活をフラットな構図で描く装飾性と非現実的で神秘的な内面性を備え、その後の20世紀美術を予兆させるような革新的表現を持つ存在として、近年、彼らの国際的な評価が高まっているのだ。

 19世紀から20世紀にかけて活躍したフランスの画家ピエール・ボナール(1867~1947年)は、ナビ派の中心人物のひとり。彼は歌川国貞や国芳、広重らの浮世絵を所蔵していたほどの日本美術愛好家で、評論家に「日本かぶれのナビ(ナビ・トレ・ジャポナール)」とあだ名をつけられたという。

オルセーの展覧会で再評価

 現在、国立新美術館(東京)では「オルセー美術館特別企画 ピエール・ボナール展」が開催されている(12月17日まで)。オルセー美術館(フランス)の豊富なコレクションを中心に130点を超える作品で構成され(うち約30点が初来日)、日本では14年ぶりとなる大規模回顧展だ。会場は7つの章に分かれ、年代順に創作の軌跡を追うことができる。

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