「一帯一路」で中国「債務の罠」に蝕まれる世界の実情(上)
2018年10月29日

中国の「罠」にどう対抗していくかが重要な課題(C)時事
中国の習近平国家主席“肝いり”の国家プロジェクト「一帯一路」戦略が、急速に進んでいる。しかし、中国からの巨額の投融資を受けた相手国が債務を返済できず、国家の戦略的資産を中国が獲得することへの警戒が世界的に「債務の罠」として高まっている。政権交代などで事業の見直しを求められるケースも相次いでいる。
こうした状況のなか、習近平政権はどのような方向性で「一帯一路」戦略を進めようとしているのか。
軍事的要衝を獲得
相手国の経済状況が不安定になると、戦略的資産を中国がどのように得るか。その典型例を挙げてみる。
まず、ギリシャの事例で見ることができる。
中国は、事実上のデフォルト(債務不履行)状態に陥ったギリシャを「欧州の玄関口」として、戦略的に極めて重要視していた。
なかでもギリシャ最大の港ピレウス港は、「一帯一路」計画において、中国の海運の重要拠点として位置づけているほか、中国海軍艦艇の寄港地としても重視していると見られる。
中国海運大手「中国遠洋海運集団」は2008年、同港の一部埠頭の運営権を獲得した。ギリシャが財政危機に陥り、公営企業民営化の一環として国家資産の売却を迫られていたタイミングを見逃さず、2016年、埠頭運営会社の株式51%を取得したのである。買収額はわずか2億8050万ユーロ(約360億円)。現在、株式保有率は7割ほどに引き上げられている。
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