「党首辞任」でも「首相続投」メルケル流「深謀遠慮」の極意
2018年11月2日
10月29日、アンゲラ・メルケル首相は記者会見で、12月に行われる「キリスト教民主同盟」(CDU)党首選挙に立候補しない旨表明した。併せてその際、2021年までの任期いっぱい首相職を務め、同年行われる予定の総選挙には立候補せず政界を引退する旨も明らかにした。
ここに至り、ついに13年に及ぶメルケル政権の終わりが宣言された。
メルケル首相がCDU党首に就任した時から数えれば18年のメルケル時代と言ってもいいかもしれない(2021年まで入れれば更に3年増える)。その間、ドイツの国力は大いに増し、メルケル首相は「欧州の盟主」とまで言われた。EU(欧州連合)におけるドイツの地位は他を圧し、ドイツの意向を無視してEUの舵取りはできないというのが現実である。
実際、メルケル首相の任期を振り返れば、リーマンショックとユーロ危機の対処に際し、メルケル首相が類まれなリーダーシップを発揮したことは忘れられない。近年のポピュリズム台頭の風潮にあって、メルケル首相こそが自由と民主主義を守る最後の担い手とされ、その手腕に期待する向きも多かった。『フィナンシャル・タイムズ』は、メルケル首相は、フランスが弱体化し、英国がEUを脱退、イタリアが混迷する中、1人で欧州の難題を背負ったとし、「欧州はメルケル氏を失うことを痛手に思う」と、その社説に記した。
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